マインドフルネスと脳
2019年04月22日
年1回のヨーガ療法学会に行ってきました。
学んできたことを少しシェア。
今日の話題は、マインドフルネスと脳のお話です。
久賀谷亮先生、熊野宏昭先生のご講話から。
私たちの脳の働きは、こんな風に変化していくという。
(3つの神経ネットワークと自己知覚)
1.CEN【実行ネットワーク】
2.SN【覚醒ネットワーク】
3.DMN【デフォルトモードネットワーク】
例えば、集中して何かに取り組んでいる時、私たちの脳は、【実行ネットワーク】に。
そのうち、なにか考え事したり心がさまよい始めると、【デフォルトモードネットワーク】に。
それに、はっと気づいたとき、【覚醒ネットワーク】か活動しだし、
もう一度、【実行ネットワーク】に戻っていく。
この中で、【デフォルトモードネットワーク】の状態を、マインドワンダリングなどと言う。
この状態が実は脳のエネルギーを消費を促進してしまうという。
ちなみに脳の活動消費は全身の活動消費の実に20%。
寝ても寝ても疲れが取れない、なんていう人はもしかしたら、脳のエネルギーを浪費しているかもしれないですね。
ですので、マインドフルネスで脳を休息することが盛んになってきているわけです。
(ちなみに、マインドフルネスの生みの親、ジョンカバットジン氏は、「私はヨガをしているだけだ」と言っているそうですからね。みんなヨガをしましょうね!)
話を戻して、
マインドフルネスを実践するということは、【覚醒ネットワーク】をオンにし【実行ネットワーク】に戻す訓練となる。
これが脳にとっては一番省エネ。
そして、なおかつ平常心を保てることにつながる。
これは、【デフォルトモードネットワーク】(DMN)時に働く脳(後帯状皮質)は、感情や記憶、認知機能のハブとしての役割を担っているため。ついイラっとしたり、不安にさいなまされたりするときに、この脳が活動してしまうのだそう。
マインドフルネスを実践していくことで、後帯状皮質の活動を抑えるため、情動にも大きな変化をもたらしてくれるのは、このため。
また熊野先生は、マインドフルネスを実践していくことで以下のような違いを体験すると仰っていました。
1.注意がそれた(主観)
2.注意がそれていたことに気づいていた(客観・メタ的認知)
1点に集中した瞑想で雑念を浮き出させ、全体を観察していく観察瞑想でそれをメタ的に気づいていく。
このことを、久賀谷先生は、
「私の思考」と「私」を切り離すこと、と表現されていましたし、
ヨガでは、
「観るもの」と「観られるもの」といった言葉で表現します。
わかりづらくなってきましたよね(笑)
ここでは、「私の考え」や「私の心」は、本当の「私」ではないと解釈しておいてくださいね。
集中状態【実行ネットワーク】から、【デフォルトモードネットワーク】(DMN)に切り替わる思考の例として、久賀谷先生はこんな例をあげていました。
2008年の北京オリンピックで、陸上女子100メートルハードルのアメリカ代表だったロロ・ジョーンズ選手は、ずっとトップを走っていたにもかかわらず、最後から2番目のハードルに引っかかって金メダルを逃してしまいました。このとき彼女は、
『ここまでいいペースで来ている。もう少し足をしっかり伸ばそうと考えてしまった瞬間足を引っかけた』
と言っていたのだそうです。
「私の考え」や「私の思考」「私が、私が・・」と考えることを自我意識といったりします。
後帯状皮質の活性は、自我意識を高めます。
ここの活性を抑えることは、アスリートにも必要なのでしょう。
また、ツイッターやFBなど、SNSをしているときも、後帯状皮質が活性化し、この【デフォルトモードネットワーク】に陥るそうです。
最後に熊野先生がちらっと言葉に出された、
マインドワンダリング自体と、鬱などの心身症は関係していないのではないか。
しかしマインドワンダリングの内容が、「認知的フュージョン」(私は無能でダメな人間だ、私は嫌われていると感じてしまうこと)は、鬱や不安症と関係があると。
自分のそうした思考にメタ的に(客観的に)気づいていくマインドフルネスとヨーガセラピーで、心のケアをしていくことも大切ですね。
今の瞬間、瞬間に意識を向けるマインドフルネス。
静まった寂静の先に見えてくるものは、、、最後のシンポジウムでは先生方はこんなお話で盛り上がりました。
皆さんの心の静けさの奥に見えてくるものはなんなのでしょうか^^
次回はマインドフルネスとヨーガセラピーの違いについて考察してみたいと思います。
kumiko
【講演者プロフィール】
●久賀谷亮先生
医師( 日・米医師免許)/ 医学博士、アメリカ神経精神医学会認定医、アメリカ精神医学会会員
日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医 としてアメリカ屈指の精神医療の現場に 8 年間にわたり従事する。そのほか、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバーUCLA 非常勤医など。2010 年、ロサンゼルスにて「TransHope Medical ( くがや こころのクリニック)」を開業。同院長として、マインドフルネス認知療法やTMS 磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。
臨床医として日米で25 年以上のキャリアを持つ。 脳科学や薬物療法の研究分野では、 2 年連続で「Lustman Award」( イェール大学精神医学関連の学術賞)、「NARSAD Young Investigator Grant」( 神経生物学の優秀若手研究者向け賞) を受賞。主著・共著合わせて 50 以上の論文がある。
著書に『最高の休息法』、『脳から身体を治す』、『無理なくやせる“脳科学ダイエット”』、『 脳が老いない』など、監訳に『あなたの脳は変えられる』(ジャドソン・ブルワー著)がある。
●熊野宏昭先生
1985年 東京大学医学部卒。
1995年 東京大学博士(医学)取得、東北大学大学院医学系研究科人間行動学分野助手
2000年 東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学助教授・准教授
2009年~現在 早稲田大学人間科学学術院教授、同応用脳科学研究所所長を兼任
2016 ~ 2018年 早稲田大学人間科学学術院副学術院長・人間総合研究センター所長
日本におけるマインドフルネスの第一人者と言われる。ヨーガ療法学会の顧問。